マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『ジョン・コルトレーン「至上の愛」に思う』

 去る7月17日は1967年に天に召されたジャズのサックス奏者、ジョン・コルトレーンの命日でした。肝臓がんのため、40歳の若さでした。
 久しぶりに彼の代表作「至上の愛 A Love Supreme」をレコードで聞きました。

 このレコードは高校生の頃、ジャズ喫茶によく通っていた時に購入したものです。当時はジャズの名盤を中心に収集し、確かマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」に続いて手に入れたように思います。
 ジョン・コルトレーン「至上の愛 A Love Supreme」は下のURLで全曲聴くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=ll3CMgiUPuU

『至上の愛』(A Love Supreme) は、コルトレーンが神に捧げた、全4パート構成による組曲のアルバムです。
 曲目とメンバーを記します。録音は1964年12月です。
A1      Part I – Acknowledgement (承認)
A2      Part II – Resolution (決意)
B       Part III – Pursuance (追求)
      /  Part IV – Psalm     (賛美)  
Jimmy Garrison(b) John Coltrane(ts) Elvin Jones (ds) McCoy Tyner(p)

 4人がぶつかり合う白熱したサウンドですが、今聞くとすんなり聞けて、あっという間に終わってしまう印象でした。しかし、初めて聞いた高校の頃はPart I の途中からコルトレーンの「A Love Supreme」という呪文のような声が入っていて「不思議な音楽だな」と思っていました。
 今回、アルバムを開いたところの彼自身のライナーノートと詩に注目しました。

 下に彼の詩「A Love Supreme」の全文と訳を記します。

「A Love Supreme」
I will do all I can to be worthy of Thee O Lord. It all has to do with it. Thank You God. 
Peace. There is none other. God is. It is so beautiful. Thank You God. 
God is all. Help us to resolve our fears and weaknesses.In you all things are possible.Thank you God.
We know. God made us so. Keep your eye on God.God is. He always was. He always will be.
No matter what... it is God. He is gracious and merciful. It is most important that I know Thee.
Words, sounds, speech, men, memory, throughts, ,fears and emotions--time--all related... all made from one... all made in one.
Blessed be his name. Thought waves--heat waves--all vibrations--all paths lead to God. Thank you God.
His way... it is so lovely... it is gracious. It is merciful--Thank you God. One thought can produce millions of vibrations and they all go back to God... everything does.
Thank you God. Have no fear... believe... Thank you God. The universe has many wonders. God is all.
His way... it is so wonderful. Thoughts--deeds--vibrations, all go back to God and He cleanses all.
He is gracious and merciful... Thank you God. Glory to God... God is so alive. God is. God loves.
May I be acceptable in Thy sight.
We are all one in His grace. The fact that we do exist is acknowledgement of Thee, O Lord. Thank you God.
God will wash away all our tears... He always has... He always will.
Seek him everyday. In all ways seek God everyday. Let us sing all songs to God.To whom all praise is due... praise God.
No road is an easy one, but they all go back to God.
With all we share God.  It is all with God.  It is all with Thee.
Obey the Lord.  Blessed is He.
We are all from one thing... the will of God... Thank you God.
--I have seen ungodly--none can be greater--none can compare Thank you God.
He will remake... He always has and He always will. It's true--blessed be His name--Thank you God.
God breathes through us so completely... so gently we hardly feel it... yet, it is our everything.
Thank you God.
ELATION--ELEGANCE--EXALTATION--All from God.
Thank you God.  Amen.

「至上の愛」
主よ、私はあなたにふさわしくなるためにできる限りのことをします。それはすべてそれはなすべきことです。神様、ありがとうございます。
平和。他にはありません。神はおられます。とても美しい。神様、ありがとうございます。
神はすべてです。私たちの恐れや弱さを解決するよう助けてください。あなたは、すべてが可能です。神様、ありがとうございます。
分かっています。神は私たちを造られました。神から目を離さないでください。神はいます。いつもいました。そして、いつもおられるでしょう。
何がなくても、神はおり、優雅で憐れみ深い。私があなたを知ることが最も大切です。
言葉、音、スピーチ、人類、記憶、思い、恐怖、そして感情-時間-すべて関連しています...すべて1つから造られています...すべてが1つにまとめられています。
主の名に祝福あれ。思考の波-熱の波-すべての振動-すべての道は神に通じています。神様、ありがとうございます。
彼の方法...それはとても素敵..それは優雅。それは慈悲深い。神に感謝します。一つの考えは何百万もの振動を生み出すことができ、それらはすべて神に戻ります...すべてがそうです。
神に感謝します。信じる。恐れはない。神に感謝します、宇宙には多くの不思議があります。神はすべてです。
彼の方法...とても素晴らしい。思考-行為-振動はすべて神に戻り、神はすべてを清めます。
彼は優雅で慈悲深い...神に感謝します。神に栄光を...神はまさに生きておられます。神はおられます。神は愛しておられます。
私があなたの目に受け入れられますように。
私たちは皆、彼の恵みの中で一つです。私たちが存在しているという事実は、主よ、あなたを認めることです。
神は私たちの涙をすべて洗い流してくださいます...彼はいつもそうしてきました...彼はいつもそうするでしょう。
毎日彼を求めてください。あらゆる方法で毎日神を求めてください。すべての歌を神に歌いましょう。なすべきことはすべて讃美することです...神を賛美しなさい。
簡単な道はありませんが、それらはすべて神に戻ります。
私たちが分かち合うすべてのもので。それはすべて神と共にあります。それはすべてあなたと一緒です。
主に従いなさい。彼は讃美される。
私たちは皆、一つのことから来ています...神の意志...神様、ありがとうございます。
--私は不敬虔なことを見てきました-誰も神より偉大になることはできません-誰も神と比較することはできません 神に感謝します。
彼は私を造り変えるでしょう...彼はいつもそうしました、そして彼はいつもそうするでしょう。それは本当です-主の名に祝福あれ-神に感謝します。
神は私たちを通して完全に呼吸します...とても優しく私たちはそれをほとんど感じません...しかも、それは私たちのすべてです。
神様、ありがとうございます。
高揚-優雅-讃美-すべて神から。
神様、ありがとうございます。アーメン。

 まるで詩編(Psalm)を読んでいるようです。コルトレーンの信仰がこの詩を、そしてこの音楽を生み出したと考えられます。
「The fact that we do exist is acknowledgement of Thee, O Lord.  (私たちが存在しているという事実は、主よ、あなたを認めることです)」とあり、Part I – Acknowledgement(承認)の意味は、このこと(主を承認することが私たちの存在理由)だったのです。
 彼がこの作品で表現したかったのは、全知全能の神が与える最高の愛に対する感謝だったのだと思います。

 ノースカロライナ州に生まれたコルトレーンは、子どもの頃から地域のプロテスタント系教会─いわゆる「黒人教会」─に通い、そこで聖書の教えのほか、ゴスペルにも触れました。父方・母方共に祖父は牧師でした。特に、母方の祖父はAME(アフリカン・メソジスト・エイスコパル)シオン教会の牧師で、自宅の隣りにあったその教会に母とよく通っていたそうです。
 さらに、コルトレーンは、1957年に神の恩寵によって、「霊的覚醒」を経験します。オリジナルの言葉で言えば、「spiritual awakening」です。これは、このアルバムのライナーノートに自らが記している言葉です。「霊的覚醒」によって、彼は、より豊かで、より充実した人生に導かれました。その頃から作品や演奏も深みのある素晴らしいものが続出しています。すべては神の恩寵です。

 「至上の愛 A Love Supreme」は十字架の愛、キリストが十字架で示した究極の愛と考えられます。イエス様は私たちの罪の購いとして、私たちを買い戻すため、私たちが罪から解放され自由人として生きるために犠牲となられました。これこそ最高の愛(A Supreme Love)であります。そのことを「承認」し、神と共に生きる「決意」をし、神の跡に従うことを「追求」し、神に感謝し「讃美」して、日々過ごすことができるよう祈りたいと思います。