先主日の説教で、テーマから思い浮かべた渡辺和子の本の題名で知られるようになった言葉「置かれた場所で咲きなさい」を紹介しました。この言葉がラインホルド・ニーバーの詩の一節で、英語原文は「Bloom where God has planted you.」(神が植えた場所で咲きなさい)であることも述べました。
今回はこの詩の全文と「ラインホルド・ニーバーの祈り」として有名な「Serenity Prayer(平静の祈り)」について記したいと思います。
ラインホルド・ニーバーの詩「Bloom where God has planted you.」の全文は以下の通りです。
“Bloom where God has planted you.”(Reinhold Niebuhr)
Please bloom where God has placed you.
Rather than give up, make the best of your life and bloom like a flower.
To bloom is to live happily.
Let your joy make others happy.
Your smile is contagious.
When you are happy and show it by your smile
Others will know it and are happy too.
God has planted you in a special place.
If you know it share it with others, your personality will shine.
It is that “shine” which we call “Bloom”
When I bloom in the place where God has placed me
My life becomes a beautiful flower in the garden of life.
Bloom where God has planted you
翻訳します。
神があなたを植えた場所で咲きなさい。
諦めるのではなく、むしろ人生の最善を尽くしなさい、そして花のように咲きなさい。
咲くことは幸せに生きることです。
あなたの喜びが他の人々を幸せにします。
あなたの笑顔が広がっていきます。
あなたが幸せで、それを笑顔で示せば、他の人々は、それを知って、彼らもまた幸せになるのです。
神はあなたを特別な場所に植えたのです。
もし、あなたが他の人々とそれを分かち合えば、あなたの人柄は輝くでしょう。
私たちが「咲く」と呼ぶのは、この「輝き」です。
神が私を植えた場所で私が咲く時、私の人生は人生の庭の美しい花になります。
神があなたを植えた場所で咲きなさい。
この詩でニーバーは、神があなたを植えた場所は特別な場所で、そこで最善を尽くし、花を咲かせるよう命じています。花を咲かせることは幸せ・喜びとなり、それが周りの人も幸せにすると言っています。そして、神が植えた場所を自分だけで独り占めにするのでなく周りの人と分かち合えば、あなたの人柄は輝き、人生は美しい花となると、幸せな人生の秘訣をこの詩は教えています。
渡辺和子の本の題名では「置かれた場所で咲きなさい」と、「自分の力で咲くように努力する」ようにも読めますが、原文の「Bloom where God has planted you(神があなたを植えた場所で咲きなさい)」は「神が植えた場所だから咲くことができる」というニュアンスを感じます。神の介在によるBloom(開花)です。
そして、ラインホルド・ニーバーといえば「Serenity Prayer(平静の祈り)」がよく知られています。
原文は以下のようです。
God, grant me the serenity to accept the things I cannot change,
Courage to change the things I can, and the wisdom to know the difference.
ニーバーに師事した大木英夫はこう訳しました。
神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。
大木英夫訳のこの祈りは、ニーバーのこの本「アメリカ史のアイロニー」の冒頭で紹介されています。
この本の巻末の年譜には、ニーバーは1943年にマサチューセッツのヒースで「Serenity Prayer」をした説教を行ったことが記録されています。
この祈りは第二次大戦の前線の兵士に配布されたり、アルコール依存症克服のための組織「アルコホーリクス・アノニマス」や薬物依存症や神経症の克服を支援するプログラムによって採用され、広く知られるようになりました。
この祈りの続きがあることを最近知りました。それが次です。
Living one day at a time, Enjoying one moment at a time, Accepting hardship as a pathway to peace,
Taking, as Jesus did, This sinful world as it is, Not as I would have it, Trusting that You will make all things right,
If I surrender to Your will, So that I may be reasonably happy in this life,
And supremely happy with You forever in the next.
Amen.
大木英夫に倣って訳してみます。
一日一日を生き、この一瞬をつねに喜び、困難は平安への道として受け入れさせたまえ。
これまでの私の考え方を捨て、イエス様がされたように、この罪深い世界をそのままに信頼させたまえ。
あなたの意思に委ねれば、この人生が道理にかなって幸せになる。
そして、あなたの許で永遠の幸せを得させたまえ。
アーメン
よく知られている祈り(前半部分)では、最後の「アーメン」がなかったり、祈願ばかりでどうなのかという思いもありましたが、後半の祈りが入ることで、困難や神の意思に委ねる意味が示され、それらを通して平安や幸せになることが示唆され、納得しました。大事なことはイエス様に倣い、神の意思に委ねることで、神の許にいることが幸せだというのです。
このラインホルド・ニーバーの詩と祈りは、私たち一人一人に神が備えたものを周りの人と分かち合い、神の意思に委ねることが幸せにつながることを私たちに教えています。「人生、かくありたい」と思うものであります。