もう夏も終わりですが、先日、DVDで映画「真夏の夜のジャズ JAZZ ON A SUMMER'S DAY」を観ました。
「真夏の夜のジャズ」は1958年夏、4日間にわたって開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」の模様を撮影した音楽ドキュメンタリー映画です。下のアドレスで予告編を見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=NI1MWLXL5KQ
映画「真夏の夜のジャズ」の基本情報は以下の通りです。
製作・監督:バート・スターン
撮影:バート・スターン、コートニー・ハフェラ、レイ・フィーラン
出演:ルイ・アームストロング、セロニアス・モンク、チャック・ベリー、アニタ・オデイほか。
ニューポートはアメリカの東海岸の歴史ある高級避暑地で、マリンスポーツが盛んな地。ヨットが停留している海岸の景色もまた美しいです。
第二次大戦後13年を経て、平和を謳歌する雰囲気が満ちています。
ファッションセンスが光る観客たち。男性もジャケットやハットをまとっています。中には聖公会の聖職者とおぼしき黒のクラージーシャツにラウンドカラーをまとった人もいました。
そんな粋な大人たちの遊び場となっている『ニューポート・ジャズ・フェスティバル』を映像でとらえたのは、後に大御所フォトグラファーとなるバート・スターン。オードリー・ヘップバーンやエリザベス・テイラー、マドンナらを撮影し、死去直前のマリリン・モンローを撮影した写真集を発売して大反響を呼んだ伝説の人物でもあります。町全体がお祭り騒ぎで浮かれている様子だったり、ファッションセンスが光る観客をとらえたり、ニューポートの美しい景色が切り取られていたり。撮影当時は28歳の新進気鋭のフォトグラファーだった彼は、大胆な撮影方法で美しい映像をフィルムに収め、魅力的な作品に仕上げることに成功していると言えます。
映画の中の演奏者と曲名は以下の通りです。
・Jimmy Giuffre Three(ジミー・ジュフリー・スリー)
「Train and The River(トレイン・アンド・ザ・リヴァー)」
・Thelonious Monk(セロニアス・モンク)
「Blue Monk(ブルー・モンク)」
・Sonny Stitt(ソニー・スティット)
「Blues(ブルース)」
・Anita O' day(アニタ・オデイ)
「Sweet Georgia Brown(スウィート・ジョージア・ブラウン)」「Tea For Two(二人でお茶を)」
・George Shearing Quintet(ジョージ・シアリング・クインテット)
「Rondo(ロンド)」
・Dinah Washington(ダイナ・ワシントン)
「All Of Me(オール・オブ・ミー)」
・Gerry Mulligan Quartet(ジェリー・マリガン・カルテット)
「As Catch Can(アズ・キャッチ・キャン)」
・Big Maybelle Smith(ビッグ・メイベル・スミス)
「I Ain't Mad At You(アイ・エイント・マッド・アット・ユー)」
・Chuck Berry(チャック・ベリー)
「Sweet Little Sixteen(スウィート・リトル・シックスティーン)」
・Chico Hamilton Quintet(チコ・ハミルトン・クインテット)
「Blue Sands(ブルー・サンズ)」
・Louis Armstrong & All Stars(ルイ・アームストロング・オール・スターズ)
「Lazy River(レイジー・リヴァー)」「Tiger Rag(タイガー・ラグ)」
・Louis Armstrong & Jack Teagarden
(ルイ・アームストロング&ジャック・ティーガーデン)
「Rockin' Chair(ロッキン・チェア)」
・Louis Armstrong & All Stars(ルイ・アームストロング・オール・スターズ)
「When The Saints Go Marchin' In(聖者の行進)」
・Mahalia Jackson(マヘリア・ジャクソン)
「An Evening Prayer(夕べの祈り)」「Shout All Over(神の国を歩もう)」
「Didn't It Rain(雨が降ったよ)」「Lord's Prayer(主の祈り)」
どれも楽しいステージであり熱演ですが、圧巻は映画の最後に登場したマヘリア・ジャクソンです。ゴスペルソング全4曲を熱唱しています。映画では司会のウィリス・コノヴァーが「皆さん、日曜日です。世界最大のゴスペル・シンガー、マへリア・ジャクソン女史をここにご紹介します。」と簡潔にアナウンスして、彼女が登場しました。
今回は彼女がこのステージの最初に歌った曲「An Evening Prayer(夕べの祈り)」の歌詞と訳を下に示します。
If I have wounded any soul today
If I have caused one foot to stray
If I have lost in my own weak pathway
Dear Lord forgive
もし私が誰かの魂を傷つけたなら
もし私の片足が迷い出したなら
もし私が弱さの中を迷っているなら
主よ、どうか赦してください
Forgive a sin I have confessed to thee
Forgive my secret sins that I do not see
Oh please any time my Keeper be
Dear Lord forgive
あなたの前に告白する罪を赦してください
また私が気がつかない罪をお赦しください
どうか私を保ってくださいますように
主よ、どうか赦してください
「An Evening Prayer(夕べの祈り)」は、エルヴィス・プレスリーも彼のゴスペル・アルバム「至上の愛 He Touched Me」の中で歌っています(若干歌詞の違うところもありますが)。神への敬虔な祈りの歌で、マへリアの信仰の篤さとエモーションがひしひしと伝わってきます。ジャズ・フェスティバルそして映画の最後に彼女の歌を持ってきた主催者や映画制作者の思い、それを見聞きする観客、アメリカ人の共通言語としてのゴスペル・ミュージックの存在の大きさを感じました。
ゆく夏を惜しむように、DVDで映画「真夏の夜のジャズ」を観ました。64年前の夏のジャズ・フェスティバルのドキュメンタリー映画。避暑地で平和を謳歌し、演奏を楽しみ、神への愛を歌った映像を見て、現在のウクライナでの戦闘やコロナによる不安等にも鑑み、音楽と信仰等について様々に思い巡らしました。