マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『映画「エルヴィス」に思う』

 今年7月1日から映画「エルヴィス」のロードショーが始まりました。なかなか観に行くことができず、終了2日前の8月9日(水)に109シネマズ高崎でこの映画を観ました。

 エルヴィス・プレスリーについては、この前のブログ「オーガスチンとマルコの家」で4回に渡って記しました。最初のものは「プレスリーとゴスペル(1)」で以下のアドレスです。
https://markoji.hatenablog.com/entry/2020/10/08/001733?_ga=2.27553788.1326484268.1661856836-207727299.1496466150
 エルヴィス・プレスリーは1977年8月16日に亡くなっており、もう逝去から45年が経ちます。レコードの売り上げでは未だに彼を超えるソロアーチストはいません。今回は、この映画「エルヴィス」と彼の聖と俗の部分にスポットを当てて述べてみたいと思います。

 映画「エルヴィス」について映画の公式HP等ではこう紹介されています。
「貧しい家庭に生まれ、黒人音楽の中で育ったエルヴィス。ブルースとゴスペルをベースにした革新的な音楽とパフォーマンスで脚光を浴びる彼は、マネージャーのトム・パーカー大佐と共に数奇な人生を送っていきます。小さなライブハウスに始まり、彼の名声はまだ保守的だったアメリカに瞬く間に響き渡ります。しかしブラックカルチャーを取り入れた彼は非難され、警察にまで目をつけられてしまいます。etc.」
 この映画の予告編は以下のアドレスから観ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=8OYM0s2vb70

 映画では彼の少年時代、米国南部の黒人居住地区に接していてゴスペルテントでの黒人の礼拝に顔を出していたことも描かれていました。黒人音楽のブルースにも慣れ親しんでいたことから、最初のレコーデイングで「That's all right.」という黒人カントリー・ブルース歌手アーサー・クリューダップの曲を取り上げたこともうなずけます。
 映画「ボヘミアン・ラプソディ」にも影響を受けたような音楽伝記映画ですが、随所に実際のエルヴィスの演奏が挿入されていました。映画の冒頭のところで、「An american trilogy (アメリカの祈り)」の演奏シーンがありました。この曲は、15億人が見たと言われる全世界同時テレビ中継のハワイ・ライブ(1973年1月14日)によって初めて全世界に伝えられました。私もこの時にこの曲を知りました。私はこのライブ盤のLPレコードも買いました。

 この時の映像を以下のアドレスで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=0FT3SmZ_zx0

「An american trilogy (アメリカの祈り)」の歌詞と訳は以下の通りです。

An american trilogy   アメリカの祈り

Oh I wish I was in the land of cotton
Old times there are not forgotten
Look away, look away, look away Dixieland
ああ 綿畑の広がる地に帰りたい
古き良き 忘れられぬ故郷に
見よ遙かに 見よ遙かに 見よ遙かなるディキシーランド

Oh I wish I was in Dixie, away, away
In Dixieland I take my stand to live and die in Dixie 
ああ、デキシーに帰りたい 遙か 遙か彼方のディキシーに
ディキシーランドに誓おう ディキシーに生きそして骨を埋めることを

For in Dixieland, I was born
Early Lord one frosty morning
Look away, look away, look away Dixieland
ディキシーランドは私の生まれた土地
それは霜のおりたある寒い朝早くだった
見よ遙かに 見よ遙かに 見よ遙かなるディキシーランド

Glory, glory hallelujah
Glory, glory hallelujah
Glory, glory hallelujah
His truth is marching on
栄光あれ 主に栄光あれ
栄光あれ 主に栄光あれ
栄光あれ 主に栄光あれ
主の真実は押し進んで行く

So hush little baby
Don't you cry
You know your daddy's bound to die
But all my trials, Lord, will soon be over
幼な子よ 泣くのはおやめ
父さんは死んでいくのだから
でも 私の試練は 主よ 間もなく終わる・・

Glory, glory, hallelujah
His truth is marching on
His truth is marching on
主に栄光あれ
神の真実がやってくる
神の真実がやってくる

この曲はアメリカの「南部・北部・黒人」の代表曲を一つにしたものです。
・ Dixie (デキシー ・・南部の歌)
・ The Battle Hymn of the Republic (リパブリック讃歌 ・・北部の歌) 
・ All My Trials (私の試練 ・・古いアメリカの黒人霊歌
 ここにエルヴィスの願いが現れていると考えます。アメリカ南部で育ち北部で音楽活動をしゴスペルから影響を受けたエルヴィスの面目躍如という感じです。

 映画「エルヴィス」では、純粋に音楽を愛し神を愛する思いとこの世で栄誉を得たいという世俗の願望の間で揺れ動くエルヴィスの姿がありました。それが興行の成功をもくろむマネージャーのパーカー大佐(トム・ハンクスが演じていました)との協力関係や反目という形で描かれていました。公民権運動のキング牧師への賛同を表す場面やそれを表す楽曲披露もありました。映画の後半では、徐々に薬物に依存していく様子も描かれていました。
 エルヴィスは聖人ではありませんでした。罪(神から離れること)を犯し、悔い改め(神に帰ること)る、その繰り返しの人生だったように思います。そしてそれは、私たちの信仰生活そのものではないかと感じました。私たちの人生も、罪を犯すことと悔い改めることの繰り返しです。だからこそ、聖霊の働きと主の導きを祈り求めるものであります。
 映画「エルヴィス」から、このようなことを思い巡らしました。