マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」に思う』

 オフだった先日の月曜日(28日)に、シネマテーク高崎で映画「アメイジング・グレイスアレサ・フランクリン」を見ました。

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 映画館で映画を観るのはおよそ1年4ヶ月ぶり、コロン禍の影響で事前に予約しての鑑賞となりました。観客は10人ぐらいでした。
 この映画は1972年1月13、14日に米ロサンゼルスのニューテンプル・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたアレサ・フランクリンのライブを収録したドキュメンタリーです。当時、音と映像をシンクさせられなかった等々で長らくお蔵入りになっていたそうですが「現代の技術を得てついにスクリーンへ」とのことです。会衆と一体となった熱い演奏、礼拝が捧げられています。予告編を下のアドレスで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=4m-pJvg8FPQ 
 
 この映画の中で進行役かつピアニスト、シンガー、そして牧師であるジェームズ・クリーブランドの存在が大きかったのを感じました。アレサ・フランクリンは、この映画のとき29歳。サザン・カリフォルニア・コミュニティー聖歌隊をバックに心の奥底から歌っていました。レコーディングのためLAにいたローリング・ストーンズミック・ジャガーやチャーリ-・ワッツも映っていました。

  1972年、すでに21枚ものアルバムと11枚のナンバーワンヒットシングルを世に送り出していた“レディ・ソウル”の異名を持つアレサ・フランクリン。アレサは子供の頃から教会でゴスペルを歌っていました。ソウル歌手としてデビューしてからはラブソングを含め幅広い内容の歌を歌って成功しましたが、このセッションでは、ルーツに立ち返り選曲もほぼすべてゴスペル・ソングに統一されました。例外的にキャロル・キングの「君の友だち」のカバーもありましたが、歌詞の一部で「友(=私)」を「神」に置き換え、「君は呼ぶだけでいい、私(=神)はそこにいる」というふうに歌っていました。なお、その曲のはじまりのクリーブランド師の「大事なのは曲でなくて誰に歌いかけるかです」の言葉が残りました。

 終盤近く、表題になっている「アメイジング・グレイス」が始まります。この場面は下のアドレスで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=CBKwV6oNYvw

 アレサがスローで丁寧に、かつドラマチックに歌い始めます。それを見て、聴いて、バックで厚いコーラスでアレサを支える聖歌隊の若者たちが、一人また一人と立ち上がり、叫び始めます。その人数がだんだん増えていく。そしてあっという間に会衆含め、会場全体が興奮に包まれます。
 ここでの歌詞と和訳はこうです。ゆっくりと繰り返しソウルフルに歌い上げています。

Amazing grace how sweet the sound That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found, Was blind but now I see.
Through many dangers, toils and snares I have already come.
'Tis grace has brought me safe thus far, And grace will lead me home.

驚くべき恵み なんと甘美な響きだろう 私のように悲惨な者を救って下さった
かつては迷ったが、今は見つけられ、かつては盲目であったが、今は見える
多くの危険、苦しみと誘惑を乗り越え、私はすでに辿り着いた
この恵みが、ここまで私を無事に導いてくださった そして、恵みが私を天の家に導くだろう

 アレサもクリーブランド師も歌いながら涙を浮かべていました。それは神により救われた感謝と喜びに溢れていました。

 その後、アレサの父であり、高名な牧師であるC・L・フランクリンが誇らしそうな様子で登場し、アレサが世俗の世界で成功を収めたことに触れ、複数の人に「教会に戻ってきて」と言われたが「娘は1度も教会を離れたことがない!」というスピーチが印象的でした。

  そして、映画は終わりを迎えました。あっという間の1時間半でした。その間、聖と俗の関係についても思い巡らしました。アレサ・フランクリンはマヘリア・ジャクソン等と並ぶゴスペルの巨匠であるとともに、ポピュラーソングにおいても成功を収めたことは、神からの賜物と考えます。両方の分野でその賜物を生かすことがアレサの使命だったのだと思います。

 なお、映画では二日間のLiveをつなぎ合わせて1時間半として編集しましたが、以下のCD(2枚組)では完全版として、両日を当日そのままに聞くことができます。

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それぞれのDiscの曲目(内容)は以下の通りです。
●Disc 1
1  オルガン・イントロダクション(オン・アワ・ウェイ)
2  オープニング・リマークス
3  オン・アワ・ウェイ
4  アレサズ・イントロダクション
5  ホーリー・ホリー
6  淋しくはないはず
7  いつくしみ深き友なるイエス
8  尊きおもいで
9  ハウ・アイ・ガット・オーヴァー
10  尊き主よ我が手を/きみの友だち
11  高き山に登らん
12  至上の愛(アメイジング・グレイス)
13  マイ・スウィート・ロード
14  イエスに我がすべてを
●Disc 2
1 オルガン・イントロダクション(オン・アワ・ウェイ)/オープニング・リマークス
2  オン・アワ・ウェイ
3  アレサズ・イントロダクション
4  いつくしみ深き友なるイエス
5  ホーリー・ホリー
6  高き山に登らん
7  神は汝を導きたもう
8  オールド・ランドマーク
9  マリアよ泣くなかれ
10  生命は永遠に
11  C.L.フランクリン師の言葉
12  尊きおもいで
13  マイ・スウィート・ロード

 この映画やCDでゴスペルについて知り、キリスト教に関心を持つ人が出てくることを期待します。
 俗は聖とつながり、聖は俗とつながってます。神は不世出のアレサ・フランクリンというシンガーを使って、そのことを証したと私は考えます。