マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『レイ・チャールズとキリスト教②』

 2週間ほど前に『レイ・チャールズキリスト教①』という題で、レイ・チャールズの音楽に与えたキリスト教の影響を、彼のヒット曲「ホワッド・アイ・セイ What'd I Say」を取り上げ、ゴスペルの曲とブルースの融合等について記しました。
 さて、最近、「レイ Ray」という彼の伝記映画をDVDで見ました。この映画は2014年10月29日、レイ・チャールズの死直後に全米で公開されました。レイ・チャールズを演じたジェイミー・フォックスアカデミー賞の主演男優賞を受賞しています。

 この映画では、大きな点字の聖書を一心に読むレイ・チャールズの姿もありました。また、クラブで、ゴスペルの楽曲に男女の色恋の歌詞を載せた音楽を演奏する彼に「神への冒涜だ」と訴える声や、その声に呼応して演奏を降りるプレイヤーの様子も描かれていました。
 
 今回はこの映画の中でも演奏されていた1962年の彼のヒット曲「アンチェイン・マイ・ハート Unchain My Heart」を取り上げ、主に聖書からの影響に注目して述べたいと思います。

Ray Charles - Unchain my Heart は、下のURLから聞く(見る)ことができます。https://www.youtube.com/watch?v=9E0FlhJnhl0&list=RD9E0FlhJnhl0&start_radio=1

Unchain My Heart」の歌詞と和訳を示します。

Unchain my heart Baby let me be
Unchain my heart Cause you don't care about me
You got me sewed up like a pillow case But you let my love go to waist
Unchain my heart Set me free
俺の心の鎖をはずしてくれ 俺の好きにさせてくれ
俺の心を解放してくれ お前が俺を構わないから
俺の心をぼろぼろにしながら 俺の愛を浪費するお前
だから俺の心を解放してくれ 自由にしてくれ

Unchain my heart Baby let me go
Unchain my heart Cause you don't love me no more
Every time I call you on the phone Some fella tells me you're not at home
Unchain my heart Set me free
俺の心の鎖をはずしてくれ 俺を行かせてくれ
俺の心を解放してくれ お前が俺を愛してないから
いつお前に電話しても 誰かがお前は留守だという
だから俺の心を解放してくれ 自由にしてくれ

I'm under your spell Like a man in a trance
You know darn well That I don't stand a chance
俺はお前にとりこさ 魔法にかかった男のように
でもお前は知っているだろう 俺がそんな扱いに我慢できないと

Unchain my heart Let me go away
Unchain my heart You worry me night and day
I live a life of misery And you don't care a bag of bean for me
Unchain my heart Set me free
俺の心の鎖をはずしてくれ 俺を行かせてくれ
俺の心を解放してくれ お前は昼も夜も悩ませる
俺の人生は惨めなのに お前は豆袋一つもくれようとしない
だから俺の心を解放してくれ 自由にしてくれ

 この歌詞は、一見すると恋する女性に夢中になっている男性の思いを歌っているように思いますが、歌詞の語順などはよく聖書に用いられている構文のように思います。例えば、マタイによる福音書5章 16節です。
「Let your light so shine before men, that they may see your good works and glorify your Father in heaven.(あなたがたの光を人々の前に輝かせなさい。人々が、あなたがたの立派な行いを見て、天におられるあなたがたの父を崇めるようになるためである。)」
「Let」や「that」の使い方です。
 また、「Set me free」の言葉からは、ヨハネによる福音書8章32節を思い浮かべます。
「You will know the truth, and the truth will set you free.(あなたがたは真理を知り、真理はあなたがたを自由にする。)」
 レイ・チャールズは恋に悩む歌詞に託して、「そこには真実の自由はない」ということを言っているのではないでしょうか?  つまり「真理だけが自由にできる」のだと。では「真理」とは何でしょうか? 
 ヨハネによる福音書14章 6節にこうあります。
『イエスは言われた。「私は道であり、真理であり、命である。」』
 イエス様こそ真理であります。
 さらに、ヨハネによる福音書8章32節の前の31節にこうあります。
『イエスは、ご自分を信じたユダヤ人たちに言われた。「私の言葉にとどまるならば、あなたがたは本当に私の弟子である。」』
 ここから、本当の自由は、真理、すなわち主イエス・キリストによって、その言葉にとどまることにおいて与えられることが分かります。
 レイ・チャールズは、「Unchain my heart(俺の心を解放してくれ)」と心の叫びをあげました。そして、彼は男女間の愛によってそれはなされないことを悟っていたのではないでしょうか? 本当の解放、自由はキリストにつながることによって得られることを暗に示していたように思います。
 ガラテヤの信徒への手紙5章1節にこうあります。
『It is for freedom that Christ has set us free. Stand firm, then, and do not let yourselves be burdened again by a yoke of slavery.(この自由を得させるために、キリストは私たちを解放してくださいました。ですから、しっかりと立って、二度と奴隷の軛につながれてはなりません。)』
 点字の聖書を熱心に読んでいたレイ・チャ-ルズは、このみ言葉を念頭に 「Unchain my heart(俺の心を解放してくれ)」の歌詞を作詞したのではないでしょうか?