マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『「カーター元アメリカ大統領国葬」に思う』

 昨年12月29日に100歳で逝去したジミー・カーター米大統領国葬が1月9日、首都ワシントンのワシントン大聖堂(米国聖公会ワシントン教区主教座聖堂)で執り行われました。司式はショーン・ロウ米国聖公会総裁主教でした。
イエス・キリストへの信仰をもって、私たちは兄弟のジェームズの遺体を埋葬のために受け取ります」と、ロウ総裁主教はプロセッション前に言いました。そして、このように祈りました「命を与える神に、聖徒たちと共に彼を完全に育ててくださるように、自信を持って祈りましょう。」

 私はCNNのライブ映像で夜中の2時過ぎまで見入ってしまいました。この様子は以下のURLで見ることができます。クワイヤーや聖書朗読や祈祷等、聖公会の厳粛な礼拝そのものです。
https://www.youtube.com/watch?v=izOKazf4XkU
 
 カーター元大統領の国葬聖公会の葬送式の式次第で進行しました。この式文は以下のURLで取得できます。この式文を手元に置いて国葬をご覧になることをお勧めします。クワイヤーや聖書朗読や祈祷等、聖公会の厳粛な礼拝でありました。
https://cathedral.org/wp-content/uploads/2025/01/39-ONLINE-FINAL-010825.pdf

 

 カーターの孫のうち3人が礼拝で話をしました。ジョシュア・カーターは、ローマの信徒への手紙8章から朗読し、それを「私の祖父の信仰の基盤」と表現しました。

 それはこの式の第1日課で、ローマの信徒への手紙8章1-18節及び38-39節です。
『1従って、今や、キリスト・イエスに結ばれている者は、罪に定められることはありません。 2キリスト・イエスによって命をもたらす霊の法則が、罪と死との法則からあなたを解放したからです。 3肉の弱さのために律法がなしえなかったことを、神はしてくださったのです。つまり、罪を取り除くために御子を罪深い肉と同じ姿でこの世に送り、その肉において罪を罪として処断されたのです。 4それは、肉ではなく霊に従って歩むわたしたちの内に、律法の要求が満たされるためでした。 5肉に従って歩む者は、肉に属することを考え、霊に従って歩む者は、霊に属することを考えます。 6肉の思いは死であり、霊の思いは命と平和であります。 7なぜなら、肉の思いに従う者は、神に敵対しており、神の律法に従っていないからです。従いえないのです。 8肉の支配下にある者は、神に喜ばれるはずがありません。 9神の霊があなたがたの内に宿っているかぎり、あなたがたは、肉ではなく霊の支配下にいます。キリストの霊を持たない者は、キリストに属していません。 10キリストがあなたがたの内におられるならば、体は罪によって死んでいても、“霊”は義によって命となっています。 11もし、イエスを死者の中から復活させた方の霊が、あなたがたの内に宿っているなら、キリストを死者の中から復活させた方は、あなたがたの内に宿っているその霊によって、あなたがたの死ぬはずの体をも生かしてくださるでしょう。
12それで、兄弟たち、わたしたちには一つの義務がありますが、それは、肉に従って生きなければならないという、肉に対する義務ではありません。 13肉に従って生きるなら、あなたがたは死にます。しかし、霊によって体の仕業を絶つならば、あなたがたは生きます。 14神の霊によって導かれる者は皆、神の子なのです。 15あなたがたは、人を奴隷として再び恐れに陥れる霊ではなく、神の子とする霊を受けたのです。この霊によってわたしたちは、「アッバ、父よ」と呼ぶのです。 16この霊こそは、わたしたちが神の子供であることを、わたしたちの霊と一緒になって証ししてくださいます。 17もし子供であれば、相続人でもあります。神の相続人、しかもキリストと共同の相続人です。キリストと共に苦しむなら、共にその栄光をも受けるからです。
18現在の苦しみは、将来わたしたちに現されるはずの栄光に比べると、取るに足りないとわたしは思います。
 38わたしは確信しています。死も、命も、天使も、支配するものも、現在のものも、未来のものも、力あるものも、 39高い所にいるものも、低い所にいるものも、他のどんな被造物も、わたしたちの主キリスト・イエスによって示された神の愛から、わたしたちを引き離すことはできないのです。』
 ジョシュア・カーターは、この聖書を朗読した後、バプテスト派の祖父が成人してからのほぼ全期間を教えてきたジョージア州プレインズの日曜学校のクラスに、祖母のロザリン・カーターと一緒に参加した時の喜びを語りました。
「教会は、さまざまな背景や信念を持つ全国の人々でいっぱいでした」とジョシュア・カーターは言いました。「そして、私の祖父は、これまでに集まった中で最も多様な日曜学校のクラスで話しました。」それらのクラスに出席した人々のほとんどは訪問者であり、会衆のメンバーではありませんでした。

 別の孫のジェームズ・カーターは、福音書の一節、マタイによる福音書5章1-16節を読みましたが、そこには山上の垂訓(至福の教え)と、イエス様が信者たちに命じた「あなたがたの光を人々の前で輝かせなさい。彼らがあなたの善行を見て、天におられるあなたの父を賛美することができるようにしなさい」が含まれています。

 マタイによる福音書5章1-16節はこうです。
『1イエスはこの群衆を見て、山に登られた。腰を下ろされると、弟子たちが近くに寄って来た。 2そこで、イエスは口を開き、教えられた。
3「心の貧しい人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。
4悲しむ人々は、幸いである、その人たちは慰められる。
5柔和な人々は、幸いである、その人たちは地を受け継ぐ。
6義に飢え渇く人々は、幸いである、その人たちは満たされる。
7憐れみ深い人々は、幸いである、その人たちは憐れみを受ける。
8心の清い人々は、幸いである、その人たちは神を見る。
9平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。
10義のために迫害される人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。
11わたしのためにののしられ、迫害され、身に覚えのないことであらゆる悪口を浴びせられるとき、あなたがたは幸いである。 12喜びなさい。大いに喜びなさい。天には大きな報いがある。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。」
13「あなたがたは地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味が付けられよう。もはや、何の役にも立たず、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである。 14あなたがたは世の光である。山の上にある町は、隠れることができない。 15また、ともし火をともして升の下に置く者はいない。燭台の上に置く。そうすれば、家の中のものすべてを照らすのである。 16そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい。人々が、あなたがたの立派な行いを見て、あなたがたの天の父をあがめるようになるためである。」』

 さらに、もう一人の孫のジェイソン・カーターが別の賛辞を捧げました。この中で「祖父が目を覚ました瞬間から横たえるまで、彼の人生は神の善良さの証でした」とジェイソン・カーターは言いました。カーター元大統領は信仰深く、その信仰の証としての人権活動等があったことを思います。

 福音書朗読の前にはバイデン大統領の弔辞がありました。

バイデン大統領は、デラウェア州選出の上院議員で、カーター氏の大統領候補を支持した最初の民主党員の1人だった1974年にさかのぼる友情を思い出していました。
ジミー・カーターの友情は私に教えてくれました...人格の強さは、肩書きや私たちが持っている力以上のものです」とバイデン大統領は続けました。さらにバイデン大統領は、カーター元大統領の最大の特徴は「人格」であったと強調し、「ジミー・カーターは正しく物事を行い、慈悲を愛し、謙虚に歩んだ」などと讃えました。

 説教(Homily)は、キング牧師と共に公民権運動を指導した著名なアンドリュー・ヤング牧師でした。彼はカーター政権下の黒人初の元国連大使で、下院議員やアトランタ市長を歴任しました。
 以下のURLで彼の説教を聞く(見る)ことができます。英文ですが字幕スーパーも付いてそれほど長くない(8分程度)ので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=IlFZpJF8iYM

 ヤング牧師は説教の冒頭でエフェソの信徒への手紙4章32節を読みました。
『互いに親切で憐れみ深い者となり、神がキリストにおいてあなたがたを赦してくださったように、互いに赦し合いなさい。』
 ヤング牧師は、「ジミー・カーターは、私にとって、奇跡のようなものだった」と語り始めました。説教の中でキング牧師の言葉を引用しました。
キング牧師はよく、偉大さは『強くマークされたアンチテーゼ』によって特徴付けられると言っていました。タフな心と優しい心を持たなければなりません。そして、それがジミー・カーターだった」とヤング牧師は話しました。
特に彼はは、カーターが白人が約4分の1しかいない郡で人種的マイノリティとして育ったことが、あらゆる背景の人々を受け入れることができたと述べました。
「マイノリティとして育った彼は、マジョリティの友人になった」とヤング牧師は言います。
 カーターと人生の半分以上を過ごしたヤング牧師は「彼が人生の毎日、私たちと分かち合った愛と慈悲のささやかな行為に、触発され続けました」と語りました。
「私にとってアメリカ合衆国の偉大さを象徴していたのはジェームズ・アール・カーター大統領であり、彼には本当に感謝しています」とヤング牧師は述べました。「なぜなら、大恐慌の厳しさとインフレの爆発にもかかわらず、彼は全能の神への献身とすべての神の子供たちへの愛から決して揺らぐことはなかったからです。」
 カーターの行動の許にあるのは信仰で、信仰の表現として人権活動・平和活動などの奉仕が存在したことを思います。
 
  説教後は、カントリーミュージックのスター、ガース・ブルックスとトリシャ・イヤーウッドがジョン・レノンの「イマジン」を演奏しました。

 ジョン・レノンの「イマジン」は、多くの人種や宗教等に敬意を表していたカーター元大統領にふさわしい選曲だったと思います。バイデン大統領の弔辞の前にフィリス・アダムズにより歌われた「アメイジング・グレイス」も同様です。

 式の最後にはショーン・ロウ米国聖公会総裁主教はじめ聖職者たちが集まって祈りを捧げました。


 カーター元アメリカ大統領は大統領の退任後に、自己の信仰の証として人権活動や平和活動に尽力しました。
 私は1月10日が70歳の誕生日で、3月末で退職します。退職後も自己の信仰の証として、自分ならではの活動をしていきたいと思います。