マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『カンタベリー大主教:「聖地の人々のための祈り」に思う』

 主の平和をお祈りいたします。
 イスラエルパレスチナの戦闘は収束の糸口が見えず、ガザ地区への空爆や地上侵攻の懸念も続いています。
 10月20日に始まったカンタベリー大主教エルサレムへの4日間の司牧訪問が終了したようです。その意図は、エルサレム教区が運営するガザ地区アル・アハリ病院での壊滅的な爆発の後、エルサレム教区のホサム・ノーム大主教と地域のキリスト教コミュニティ全体に連帯を示すことでした。ジャスティン・ウェルビー大主教は、エルサレムの旧市街でギリシャ正教会の総主教であるテオフィロス3世と会うことから訪問を始め、聖墳墓教会で他教派の聖職者と共に祈りました。これらのことは、以下のカンタベリー大主教のホームページで確認することができます。 https://www.archbishopofcanterbury.org/news/archbishop-justin-completes-pastoral-visit-jerusalem
 
 さて、先主日、10月16日に発表されたカンタベリー大主教の「聖地の人々のための祈り」を私なりに訳したものを特梼の後に捧げましたが、前橋では信徒の方が特に何も言わないのに一緒に唱えてくださり、感動しました。今回はこの祈りについて記します。

 まず、原文を示します。

The Archbishop of Canterbury: A Prayer for the People of the Holy Land

God of Compassion and Justice,
We cry out to you for all who suffer in the Holy Land today.
For your precious children, Israelis and Palestinians,
Traumatised in fear for their lives;
Lord, have mercy.

For the families of the bereaved,
For those who have seen images they will never forget,
For those anxiously waiting for news, despairing with each passing day;
Lord, have mercy.

For young men and women,heading into combat,bearing the burden of what others 
have done and what they will be asked to do;
Lord, have mercy.

For civilians in Israel, Gaza and the West Bank, that they would be protected 
and that every life would count and be cherished and remembered;
Lord, have mercy.

For the wounded, and those facing a lifetime of scars, 
for those desperately seeking medical treatment where there is none;
Lord, have mercy.

For medical and emergency personnel, risking their own lives to save those of others;
Lord, have mercy.

For those who cannot see anything but rage and violence, 
that you would surprise them with mercy, and turn their hearts towards 
kindness for their fellow human beings;
Lord, have mercy.

For people of peace, whose imagination is large enough 
to conceive of a different way, that they may speak, and act, and be heard;
Lord, have mercy.

Mighty and caring God, 
you promised that one day, swords will be beaten into ploughshares, 
meet us in our distress, and bring peace upon this troubled land.

Amen. 

 私が訳したものは以下の通りです。

      カンタベリー大主教 : 聖地の人々のための祈り(私訳)

慈しみと正義の神よ、
私たちは今日聖地で苦しんでいるすべての人のためにあなたに叫びます。
あなたの大切な子供たち、イスラエル人とパレスチナ人のために、
彼らは毎日の生活の中で、恐怖で傷つけられています。
主よ、憐れんでください。

大事な人を失った家族のために、決して忘れられない映像を見た人のために、
日を追うごとに絶望し、心配しニュースを待っている人のために。
主よ、憐れんでください。

戦闘に向かっている若い男性と女性のために、
彼らは受けたことと行うよう求められている重荷に耐えています。
主よ、憐れんでください。

イスラエルガザ地区ヨルダン川西岸地区の民間人のために、
彼らが保護され、すべての生命が尊ばれ、大切にされ、記憶されるように。
主よ、憐れんでください。

負傷者、生涯を通して傷跡に直面している人々のために、
何もないところで必死に治療を求めている人々のために。
主よ、憐れんでください。

医療従事者や救急隊員のために、
彼らは他の人の命を救うため自らの命を危険にさらしています。
主よ、憐れんでください。

怒りと暴力しか見えない人々のために、
あなたは彼らを慈悲によって驚かせ、彼らの心を仲間である人間への優しさに向けるでしょう。
主よ、憐れんでください。

他の方法を思いつく想像力を確かに持ち、話し、行動し、聞かれる平和な人々のために。
主よ、憐れんでください。

力強く思いやりのある神よ、あなたはいつの日か戦いをやめ平和に暮らし、私たちの苦痛の中で私たちに会い、この困難な土地に平和をもたらすと約束されました。

アーメン。

 冒頭のCompassion and Justiceを「慈しみと正義」と訳しました。Compassionはグーグル翻訳では「哀れみ」でしたが、ちょっとニュアンスが違います。ヘブライ語で「慈しみ」はヘセド、「正義」はミシュパートで、ヘセドには「誠実、恵み、忠実」という意味もあります。この場合は「慈しみと正義」が一番合っていると考えました。
 「For young men and women,heading into combat」は徴兵令のない日本では分かりにくいと思います。イスラエルでは女性にも徴兵令が適応されています。今もイスラエルガザ地区との境には30万人もの予備役の男女の兵士が配置されています。そこで、ここは「戦闘に向かっている若い男性と女性のために」と、「bearing the burden of what others have done and what they will be asked to do;」は「彼らは受けたことと行うよう求められている重荷に耐えています。」と訳しました。
 「For those who cannot see anything but rage and violence, 」は「怒りと暴力しか見えない人々のために」と訳しましたが、これはハマスイスラエル、両方の政治指導者と考えます。続く「that you would surprise them with mercy, and turn their hearts towards kindness for their fellow human beings;」を「あなたは彼らを慈悲によって驚かせ、彼らの心を仲間である人間への優しさに向けるでしょう。」と訳しましたが、これはこの戦闘の解決について諦めず、神の果たす力を信じていることを示していると考えます。
 さらに「For people of peace, whose imagination is large enough to conceive of a different way, that they may speak, and act, and be heard;」は「他の方法を思いつく想像力を確かに持ち、話し、行動し、聞かれる平和な人々のために。」と訳し、この問題の解決のための方法は必ずあるという思いが表れています。 

 最後の「Mighty and caring God, you promised that one day, swords will be beaten into ploughshares, 」は「力強く思いやりのある神よ、あなたはいつの日か戦いをやめ平和に暮らし」と訳しましたが、「swords will be beaten into ploughshares」は直訳すれば「剣は鋤に打ち直されるでしょう」であり、これはイザヤ書2章4節やミカ書4章3節の引用です。そして、「meet us in our distress, and bring peace upon this troubled land.」を「私たちの苦痛の中で私たちに会い、この困難な土地に平和をもたらすと約束されました。」と訳し、神の力によって平和がもたらされるという確信を示しました。

 この祈りを日々唱えて、聖地の平和と聖地の人々の身の安全を祈りたいと思います。主と共に。