マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

「アヴェ・マリアの祈り」に思う

 3月8日(水)から4月5日(水)まで、火曜日から金曜日の毎日午前10時30
分からマッテア教会聖堂で『大斎節中の「朝の祈り」と「ロザリオの祈り」』
を行っています。これまで0~4名の会衆を得て実施しています(0の場合は
司祭のみで)。
 「ロザリオの祈り」はプロテスタントの方は馴染みがないと思いますが、シンプルな祈りで真摯に祈ることができ、してみると心に平安が与えられます。
「ロザリオの祈り」については、これまでもこのブログで2回ほど取り上げていますが、今回は「ロザリオの祈り」の中で一番多く唱える(53回)「アヴェ・マリアの祈り」について記したいと思います。

 私たちが毎回唱えている現行の「アヴェ・マリアの祈り」(2011年6月14日定例司教総会にて承認)は以下の通りです。
『アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
 主はあなたとともにおられます。
 あなたは女のうちで祝福され、
 ご胎内の御子イエスも祝福されています。
 神の母聖マリア、
 わたしたち罪びとのために、
 今も、死を迎える時も、お祈りください。
 アーメン。』

 「アヴェ・マリアの祈り」の前半4行は、天使ガブリエルとエリサベトが聖母マリアに向けた言葉から取られています。
  最初の2行は「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」(ルカ1:28)、次の2行は「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子様も祝福されています。」(ルカ1:42)です。前者は「神の御子を身ごもる」と伝える天使ガブリエルのマリアへの挨拶、後者は訪ねてきたマリアの挨拶への親類エリサベトの言葉です。
 「アヴェ・マリアの祈り」の後半の3行は、聖母マリアに執り成しを頼む祈りで、中世においてフランシスコ会の修道士の付加と言われています。なお、「神の母(テオトコス)」という称号は4世紀頃から用いられています。

 今回は特に「アヴェ・マリアの祈り」の最初の2行の言葉「アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、主はあなたとともにおられます。」に焦点を当てたいと思います。
 ここは、この前の「聖母マリアの祈り」では「恵みあふれる聖マリア、主はあなたとともにおられます。」とされ、ラテン語原文にある「Ave」は省略されていましたが、今回は取り入れられました。しかしラテン語の「Ave」には「こんにちは」「おめでとう」「喜びなさい」などいろいろな意味があるので、そのまま片仮名で表記することにしたようです。冒頭のこの箇所はいわゆる「受胎告知」の場面で、ダ・ヴィンチはじめ多くの画家がインスピレーションを得て描いています。マッテア教会にも洗礼盤の上に、このようなステンドグラスがあります。

「神の御子を身ごもる」と伝えられたマリアは驚き戸惑いますが、最後には「私は主の仕え女です。お言葉どおり、この身になりますように。」(聖書協会共同訳ルカ1:38)と答えました。神が共にいてくださり、マリアが神を信じていたからそう言えたのでした。マリアの賛歌の中のルカ1:48にも「この卑しい仕え女に目を留めてくださったからです。」とありますが、聖書協会共同訳で「仕え女」、これまで「はしため」と訳されたこのギリシャ語は「ドゥーレー」でした。この言葉は、「ドゥーロス」の女性形です。ドゥーロスの意味は「奴隷」であり、主の僕の「しもべ」です。
 当教会のステンドグラスやフラ・アンジェリコが描く天使ガブリエルから受胎告知を受けるマリアは、腰をかがめて両手を重ねています。この仕草は、相手を敬い、相手に同意するという意味があります。これはマリアの神への従順を表しています。自分が取るに足りない「主の奴隷」であることを認めることで、「フィアット」「なれかし」「この身になりますように。」「Let it be」と宣言できたのだと考えます。ちなみに、ビートルズポール・マッカートニーはこの御言葉から名曲「Let it be」を生み出しました。
 私たちがなすべきことは何でしょうか? それはマリアが天使にいった言葉「お言葉どおり、この身になりますように。(Let it be to me according to your word.)」のように、主の御言葉に聞き従うことではないでしょうか?

  「アヴェ・マリアの祈り」からこのようなことを思い巡らしました。このことを踏まえて、日々、「ロザリオの祈り」を、ことにその中の「アヴェ・マリアの祈り」を主に捧げたいと思います。