マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『ビートルズ「エリナー・リグビー」に思う』

 去る10月28日(金)にビートルズリボルバー」のスペシャル・エディションが発売されました。早速、セッションズの入った2CD盤を購入し、聞いています。

リボルバー」は私が中学3年の時に「オールディーズ」と共に最初に購入したビートルズのレコードです。この中で私が最も好きな曲は「エリナー・リグビー」です。
 ビートルズの「エリナー・リグビー」は以下のURLで聞くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=fq26Ud9AgP0 
 ジョージ・マーティンが編曲した弦楽八重奏にのせてポール・マッカートニーが歌うリードボーカルに、ジョンとジョージがハーモニーをつけています。

 「Eleanor Rigby」の歌詞と和訳は以下の通りです。

Ah, look at all the lonely people. Ah, look at all the lonely people.
ああ、あの孤独な人たちをごらん ああ、あの孤独な人たちをごらん

Eleanor Rigby picks up the rice in the church where a wedding has been. Lives in a dream. 
Waits at the window, wearing the face that she keeps in a jar by the door. Who is it for?
All the lonely people, where do they all come from?
All the lonely people, where do they all belong?
エリナー・リグビーは結婚式が終わった教会で米を拾う 夢の中に暮らし
窓辺で待つ ドアのわきのビンのクリームで化粧して一体誰を待っているの?
孤独な人たち、彼らはみんなどこから来たの?
孤独な人たち、彼らはみんなどこに居たらいいの?

Father McKenzie writing the words of a sermon 
that no one will hear. No one comes near.
Look at him working, darning his socks in the night
when there's nobody there. What does he care?
All the lonely people, where do they all come from?
All the lonely people, where do they all belong?
マッケンジー神父は説教の原稿を書いている
でも、誰も聴かないし、誰も来ない
ごらん、彼は誰にも見られないよう夜中に靴下を繕っている
誰もいないのに、何を気にしているのだろう?
孤独な人たち、彼らはみんなどこから来たの?
孤独な人たち、彼らはみんなどこに居たらいいの?

Ah, look at all the lonely people. Ah, look at all the lonely people.
ああ、あの孤独な人たちをごらん ああ、あの孤独な人たちをごらん

Eleanor Rigby died in the church and was buried along with her name. 
Nobody came.
Father McKenzie wiping the dirt from his hands as he walks from the grave. 
No one was saved.
All the lonely people, where do they all come from?
(Ah, look at all the lonely people.)
All the lonely people, where do they all belong?
(Ah, look at all the lonely people.)
エリナー・リグビーは教会で亡くなり、その名とともに葬られた
誰もお別れに来なかった
マッケンジー神父は手の泥を拭いながら墓を去る
誰も救われなかった
孤独な人たち、彼らはみんなどこから来たの?
(ああ、あの孤独な人たちをごらん)
孤独な人たち、彼らはみんなどこに居たらいいの?
(ああ、あの孤独な人たちをごらん)

 人生の孤独、あるいは死について綴った、当時としては珍しい物語風の歌詞です。ポールが発案した結婚式のライス・シャワーの後に残された米を拾う年老いた孤独な女性の物語です。化粧をしても誰も来ない。亡くなるときも教会の葬儀にも誰も来ないような孤独な女性です。マッケンジー神父も説教を誰も聞いてくれない、夜中に靴下を繕うような孤独な人物として描かれています。
  ポールはこう歌います。「誰も救われなかった。孤独な人たち、彼らはみんなどこから来たの? 孤独な人たち、彼らはみんなどこに居たらいいの?」
 この歌詞は10月20日のブログで取り上げたレッド・ツェッペリンの「天国への階段」で記したアイロニーではないかと思います。アイロニーとは、言わんとすることの反対を述べることによって言わんとすることをいっそう効果的に相手に理解させる方法です。この箇所で言えば「みんな救われている。孤独ではない。皆、どこから来たか分かり、ここに居場所がある」ということではないでしょうか? 「誰も神により救われ、ひとりぼっちではない、私たちは神から遣わされ、この地に、そしてこの教会に居場所がある」ということを暗に言っているのではないでしょうか?

 なお、エリナー・リグビーとはこの曲のために創作された架空の女性ですが、同姓同名の墓石がジョンとポールが初めて出会った「セント・ピーターズ教会」にありますので、ポールの潜在意識に名前が残っていたのでしょう。この墓石です。

 墓石によれば、実在するエリナー・リグビーは、1895年にリヴァプールで生まれ、トーマス・ウッズという男性と結婚し、1939年に44歳で死去しています。夫から愛されたとありますから、この曲の主人公とは境遇が違います。
 キリスト教における墓は、記念碑(モニュメント)のような役割をしています。墓石を見ると、この女性は孤独ではなく、この地に居場所があったことが分かります。
 ビートルズのこの曲「エリナー・リグビー」も、表面的には、人生の孤独、あるいは死について綴っていますが、私には「誰もひとりぼっちではない、私たちは、この地に、そしてこの教会に居場所がある」と言っているように思えます。