マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

マーヴィン・ゲイのアルバム「ホワッツ・ゴーイン・オン(What's going on)」に思う

 先週、「Black Lives Matter」を象徴する曲として、スティービ-・ワンダーとポール・マッカートニーの共作「Ebony, ivory」を取り上げました。音楽(R&B)がエンターテーメントして優れ、また社会問題等と密接に関わっている例として私が思い浮かべるのが、1971年に発表されたマーヴィン・ゲイのアルバム「ホワッツ・ゴーイン・オン(What's going on)」です。今回はこのアルバムについて思い巡らしたいと思います。

 マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン(What's going on)」は、米『ローリング・ストーン』誌が選ぶ「歴代最高のアルバム(The 500 Greatest Albums of All Time)」として、ビートルズの「サージャント・ペパーズ」などを押さえて1位に選出されています。
 私が聞いているのはこのCDです。

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 このアルバムのタイトル・ソング「ホワッツ・ゴーイン・オン(What's going on)」はマーヴィン・ゲイが、当時、ベトナム戦争から帰還した弟から戦場の様子を聞き、反戦曲としてモータウンの専属作家のアル・クリーヴランド、フォー・トップスのメンバーのレナルド・ベンソンらと共に書き上げました。1971年1月20日、アルバムに先駆けてシングルとして発表され(B面は「ゴッド・イズ・ラヴ」)、Billboard Hot 100で2位、R&Bチャートでは1位を記録し、5月にアルバムがリリースされました。
 このアルバムは、タイトル・ソングのほか収録曲それぞれに戦争・公害・環境問題等の社会的なメッセージが込められ、タイトル・ナンバーのメロディが随所で再登場する構成も相まって、コンセプト・アルバムと呼べる内容です。また、マーヴィン・ゲイはこのアルバムでモータウンのアーティストとしては異例のセルフ・プロデュースに挑み、同時期にセルフ・プロデュースの路線にシフトしたスティービー・ワンダーにも影響を与えています。

 タイトル・ソング「ホワッツ・ゴーイン・オン(What's going on)」は下のアドレスから聞く(見る)ことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=fPkM8F0sjSw
 歌詞と和訳はこうです。

 Mother, mother There's too many of you crying
 Brother, brother, brother There's far too many of you dying
 You know we've got to find a way To bring some loving here today, ya
 母さん あまりに多くの人が涙する
 兄弟よ あまりに多くの人が死んでいく
 さあ、すぐに見つけなければ 何か思いやりをもたらす道を

 Father, father We don't need to escalate
 You see, war is not the answer For only love can conquer hate
 You know we've got to find a way To bring some loving here today
 神よ 僕らはこれ以上の争いは必要ない
 だから、戦争は解決法にはならない 憎しみに勝てるのは愛だけ
 さあ、すぐに見つけなければ 何か思いやりをもたらす道を

 Picket lines and picket signs Don't punish me with brutality
 Talk to me, so you can see Oh, what's going on
 What's going on Yeah, what's going on
 Ah, what's going on
 プラカードを掲げて行進しよう 無慈悲に罰しないでくれ
 話せば解かり合える ああ、何が起きているんだ
 何がどうなっているんだ どうしたというんだ...

 In the mean time Right on, baby
 Right on Right on
 その日まで そのとおりに
 その調子で そのまま進もう

 Father, father Everybody thinks we're wrong
 Oh, but who are they to judge us Simply because our hair is long
 Oh, you know we've got to find a way To bring some understanding
 Here today, oh
 神よ みんなが僕らを悪者扱いする
 でも、僕らを裁く彼らは何者? ただ髪が長いという見た目だけで
 さあ、すぐに見つけなければ 何か理解をもたらす道を

 Picket lines and picket signs Don't punish me with brutality
 Come on, talk to me So you can see
 Yeah. what's going on Yeah, what's going on
 Tell me what's going on I'll tell you what's going on - Uh
 Right on baby Right on baby
 プラカードを掲げて行進しよう 無慈悲に罰しないでくれ
 話せば解かり合える ああ、何が起きているんだ
 どうしたというんだ 教えてくれ、何が起きているのか
 教えてくれ、何が起きているのか 教えよう、何が起きているか
 その調子で  そのまま進もう 

 私は、この曲を、ベトナム戦争で死んでいった兄弟、それを嘆き悲しむ母親を前にして、父なる神に「戦争でなく愛にこそにこの問題の解決法を見出す」と誓う、メッセージ・ソングととらえました。キング牧師の非暴力主義と共通するものを感じました。
 この曲のテーマから次の聖句を思い浮かべました。
愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。「『復讐は私のすること、私が報復する』と主は言われる」と書いてあります。』(ローマの信徒への手紙12: 19)
『誰も、悪をもって悪に報いることのないように気をつけなさい。互いに、またすべての人に対して、いつも善を行うよう努めなさい。』(テサロニケの信徒への手紙一 5:15)

 「ホワッツ・ゴーイン・オン(What's going on)」がリリースされてから50年が経過しました。この曲が取り上げたヴェトナム戦争の後も多くの戦争や内戦があり、この文章を書いている最中にも、アフガニスタンタリバンが内戦の末、政権を奪取しました。パレスチナ問題も解決していません。この曲が示した「戦争でなく愛による問題の解決」は未だ実現しているとは言えません。50年を経て、この曲の理念やこの聖句が表す主の戒めに立ち帰ることは意義深いと思うのです。