マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『「2022日本聖公会人権セミナー」に思う』

   私は北関東教教区の宣教部人権担当をしており、「2022日本聖公会人権セミナー」の準備委員でもありました。今回は10月12日(水)・13日(木)、草津でリモート(Zoom)により開催された「2022日本聖公会人権セミナー」について記します。北関東教区では、先主日の代祷の項目としてくださり、教区内の教会の皆様の祈りに支えられて励みとなりました。

   日本聖公会では、各教区が取り組んでいる人権に関わる問題、その地域における人権の課題を学び、共有化することを目指して「人権セミナー」を開催しています。今年は北関東教区が東京教区と協力して担当し、51名の参加を得て、ほぼ予定通り実施することができました。感謝であります。
    準備委員は北関東教区・東京教区、各3名ずつの6名で、北関東3名、東京2名のボランティアの信徒の方の強力なサポートを得て開催日まで日夜準備を進めてきました。
主会場は聖マーガレット館で、ここにスタジオのような部屋を作り、ここから配信しました。

 聖マーガレット館については以下のバルナバ・ミッションのURLで詳しく説明されています。
http://dango3k.music.coocan.jp/legh/bh5.html#3

 今年の人権セミナーは、新型コロナウイルスの感染状況が好転せず、現在も栗生楽泉園内への入園ができず、施設内のハンセン病回復者ともお会いすることもできない状況であること等から対面での実施を見送り、オンラインでの開催としました。

 今回の人権セミナーは、キリスト者が人権にかかわる問題・課題に取り組む意味等について、草津における「ハンセン病」の歴史等を通して迫りたいと考え、テーマを「キリスト者と人権~草津から見えてくるもの~」としました。参加された方々が人権を自分のこととしてとらえ、キリスト者としての在り方等について思い巡らしてほしいと願いました。
そして、この人権セミナーを通して見えてくるものの気づきから、一人ひとりがそれぞれに置かれた場所でキリスト者として新たに生きる機会となりますようにと期待しました。
 中心聖句は、草津ハンセン病の方々に大きな働きをされたコンウォール・リー女史の愛唱詩編詩編145:14~16としました。以下の通りです。
「主は悩みのうちにある者を支え 倒れる者をすべて立たせてくださる
  すべての者の目はあなたを待ち望み あなたは時にしたがって命の糧を恵まれる            
  生きているすべてのものの願いを あなたはみ手を開いて満たされる」
 この聖句で、詩人は私たちを支え命の糧を与えてくださる主を賛美し称え
ています。キリスト者の生きる源泉は「神の愛」「神への信頼」であり、人権への取り組みについてもその視点は重要であると考えます。
 なお、今回のセミナーの案内(開催要項)等で「コンウォール・リー女史」というふうに「女史」という表現を用いました。参加申込時にご指摘いただいて、初めて「女史」という言葉が女性を特別視する表現で男性側に対語がない「不快語」の一つであることを知りました。そこで、私の準備委員を代表しての挨拶等で、「女史」という「不快語」を使用したことについてのお詫びをしました。
 
 二日間のプログラムの中心は、一日目が第1セッション(草津の映像鑑賞)で、第1部「草津でのハンセン病の歴史と聖バルナバミッションについて」と第2部「重監房とクリスチャン」、二日目が第2セッション(講演会)で、「私の生きたハンセン病の歴史」と題した藤崎 陸安氏(東京教区聖フランシス・聖エリザベツ礼拝堂信徒、全国ハンセン病療養所入所者協議会事務局長)の講演でした。それぞれの映像や講演の後にはグループシェアリングを行いました。また、礼拝も重要視し、毎日、開始と終了時に礼拝を行いました。特にこの人権セミナーの最後に、納骨堂前で主教様の司式・説教で「逝去者記念の式」を実施できたことは大きな意味があったと考えます。髙橋主教様は、この式の中で、草津の栗生楽泉園で命を落とされた皆さんに無関心だったことや差別された社会を改める働きをしてこなかったことを謝罪されました。
 私は、一日目の開会の礼拝の代祷でこのように祈りました。
「これから始まる「2022人権セミナー」が主の御旨にかないますように。部落差別や入国管理、ミャンマーアフガニスタン等、国内外の人権侵害の状況が解消に向かいますように。そのために私たちが主の望まれることを果たすことができますように。」
 また、夕の礼拝の代祷ではこう祈りました。
「私たちが第1セッションの2つの草津の映像から学んだことを心に留め思い巡らし、キリスト者としての信仰生活を送ることができますように。病いのうちにある人、困難の中にある人、また、私たち一人一人が心に思う人たちが、主のみ守りのうちに癒やされ、恵みがありますように。」

 私たち、キリスト者の活動は祈りに支えられて行います。人権に対する取り組みも、知識も大切ですが、それだけでなく、それを信仰者として見つめとらえ、祈りに支えられ主の御心にかなう活動へと生み出すことができるようにと願います。次に記す開会の礼拝で捧げた「人権活動を支える主日の祈り」の通りです。このことを心に留めて日々生活して参りたいと思います。
『わたしたちを良いものとしてお造りになった神よ、あなたは、わたしたちがお互いの命を大切にして生きることを望んでおられます。わたしたちは自分の命が尊重されたとき大いに喜びますが、他の人の命を傷つけたり、命がないがしろにされ、人権が無視されて心を痛めている人がいても無関心であったことをざんげします。どうかわたしたちに、人の痛みがわかる感性が与えられ、苦しんでいる人たちの痛みを共感し、人権を守るために立ち上がる力と勇気を与えて<ださい。主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン』