先日の昇天日の礼拝やS・M兄の「通夜の祈り」で兄の愛唱聖歌である聖歌498番「主われを愛す」について言及しました。それは3節の歌詞がイエス様の昇天の意味を表していることからでした。そのことだけでなく聖歌「主われを愛す」には深い意味があります。今回は聖歌498番「主われを愛す」について思い巡らしたいと思います。
「主われを愛す」は日本で最も愛されている聖歌・讃美歌と言えるかもしれません。私がチャプレンをしているマーガレット幼稚園でも「いつくしみ深き」とともに誕生会で毎回歌っており、子供たちにも親しまれています。
私が今聴いているのはこの本田路津子の「讃美歌アルバム」のJesus loves meです。
以下のYoutubeで聴くことができます。このバージョンでは「Oh, how He loves you and me.」等の歌詞が追加されています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZpIEECLZ0bo
このアルバムには、先日帰天されたS・M兄のもう一つの愛唱聖歌「しずけき祈りの」も収録されています。
どの讃美歌も本田路津子の伸びやかなピュアな声で心が洗われるようです。
聖歌「主われを愛す」については、以前の私のブログ「オーガスチンとマルコの家」でも主に唱歌「シャボン玉」との関係で記しました。メロディーが類似している点についてでした。今回は歌詞にスポットを当てて考察したいと思います。
「主われを愛す」については、大塚野百合(恵泉女学園名誉教授)の『「主われを愛す」ものがたり~賛美歌に隠された宝~』で、誕生にまつわるドラマを記しています。
この本にこうあります。
『作詞者アンナ・ウオーナーは、ニューヨークで生まれましたが、2才の時、母を亡くし、父親の妹フランシスが母親がわりになって育ててくれました。父親の兄トーマスは牧師でウエストポイント陸軍士官学校のチャプレンを勤め、アンナの家族はしばしばこの学校を訪れたとのことです。彼女は姉のスーザンと1830年ごろ回心し、心から主イエスを信じ、長老教会の会員になりました。二人は神の愛を伝えるべく自宅で聖書研究会を開き、ウエストポイントの士官候補生を招き、その学びは長年にわたって続いたのです。1860年にアンナは「主われを愛す」の歌詞を書き、2年後に作曲家のウィリアム・ブラッドベリーが折り返しをつけ、それ以来、「主われを愛す」は多くの人々に愛されるようになりました。』
心から主イエスを信じ神の愛を伝えたいという厚い信仰がこの聖歌・讃美歌を生んだと言えます。
私たちが親しんできた聖歌498番・讃美歌461番「主われを愛す」の歌詞はこうです。
1 主 われを愛す 主は強ければ われ弱くとも 恐れはあらじ
(おりかえし)
わが主イェス わが主イェス、 わが主イェス われを愛す
2 わが罪のため 栄えをすてて 天(あめ)より降(くだ)り 十字架につけり
(おりかえし)
3 国の門(かど)を 開きてわれを 招きたまえり いさみて昇らん
(おりかえし)
4 わがきみイェスよ われを清めて よきはたらきを なさしめたまえ
(おりかえし)
英語の原詩はこうです。「Jesus loves me!」
1 Jesus loves me! This I know, For the Bible tells me so.
Little ones to Him belong; They are weak, but He is strong.
Chorus:
Yes, Jesus loves me! Yes, Jesus loves me!
Yes, Jesus loves me! The Bible tells me so.
2 Jesus loves me! He who died Heaven's gate to open wide;
He will wash away my sin, Let His little child come in.
Chorus
3 Jesus loves me! Loves me still Tho' I'm very weak and ill;
From His shining throne high, Come to watch me where I lie..
Chorus
4 Jesus loves me! He will stay Close beside me all the way;
If I love Him, when I die He will take me home on high.
Chorus
前述した大塚野百合はこう訳しています。
1 イエスは私を愛しておられる! 聖書はそのように私に告げている。
子どもたちは主のものです。彼らは弱くても、主は強い。
(おりかえし)
本当にイエスは私を愛しておられる 本当にイエスは私を愛しておらる
本当にイエスは私を愛しておられる 聖書がそのように私に告げている。
2 イエスは私を愛しておられる! 主は命を捨てて、天国の門を広く開けてくださっ た。
主は私の罪を洗い流される。主の子どもみなそばに来なさい。
(おりかえし)
3 イエスは私を愛しておられる! いつも。 私はとても弱く、病んでいるけれど。
主は天の輝く玉座から、 私の寝ている所に来られ、私を見守ってくださる。
(おりかえし)
4 イエスは私を愛しておられる! 主はいつも私のすぐそばに寄り添ってくださる。
私が主を愛すると、私が死ぬとき、 主は私を天のふるさとに、つれていってくださる。
(おりかえし)
どの節も最初が「イエスは私を愛しておられる!」となっており、このことがこの歌の命であることが分かります。
私には特に4節の「He will stay Close beside me all the way; (主はいつも私のすぐそばに寄り添ってくださる。)」の歌詞が心に響きました。そして最後の歌詞「He will take me home on high.(主は私を天のふるさとに、つれていってくださる。)」は敬愛する信仰の先達であるS・M兄の帰天を経験した今、特別な感慨を抱かせます。
なお、この聖歌を作曲したウィリアム・ブラッドベリーは「主われを愛す」のほか多くの聖歌・讃美歌を作曲しており、その中には、聖歌446番「いさおなきわれを」や前述したS・M兄のもう一つの愛唱聖歌である聖歌548番「しずけき祈りの」や私の愛唱聖歌の聖歌520番「いつくしみ深き主の手にひかれて」もあります。
聖歌「主われを愛す」については一つのエピソードがあります。
カール・バルトという有名な神学者がいました。彼は大変多くの書物を書いた人ですが、あるとき「あなたの神学書の中心的なテーマは何ですか?」という質問に、ちょっと考えてから「Jesus Loves me this I know, For the Bible tells me so.」と答えたそうです。「イエス様が私を愛してくださるという、このことを私は知っている。それは、聖書がそう私に教えてくれているから。」これは「主われを愛す」(原詩)の冒頭の言葉ですが、大神学者バルトにして、キリスト教の最も大きなテーマがこの一節に凝縮されていると言わしめた、まさに「イエス様が私を愛している」「主われを愛す」、これこそが聖書の、そしてキリスト教の最も大きなメッセージであり、福音(良い知らせ)であると言えます。