マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『「ザ・ビートルズ: Get Back」に思う』

 7月13日に「ザ・ビートルズ: Get Back」DVDコレクターズ・セットが発売されました。早速購入し、途中まで見ました。

 「ザ・ビートルズ: Get Back」は、ビートルズが1969年1月に行った、いわゆる「ゲット・バック・セッション」の模様を記録した全3部構成、合計約8時間の長編ドキュメンタリー映画です。予想以上に美しい画像でした。高校1年の時に見た映画「Let It Be」を思い出しますが、50年以上経って「ゲット・バック・セッション」を家庭で長時間、鑑賞できる恵みを実感しています。
 曲では、やはりタイトルナンバーの「Get Back」が印象深く、歌詞はキリスト教的だと感じました。
 ルーフトップコンサートにおける「Get Back」を下のアドレスで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=Iv11BRLklew

「Get Back」の歌詞と和訳はこうです。

Jojo was a man who thought he was a loner But he knew it couldn't last
Jojo left his home in Tucson, Arizona For some California grass
ジョジョは思ってた自分は一匹狼だって 
でも分かってた それは長く続かないって
ジョジョは故郷を後にした アリゾナのツーソンから 
カリフォルニアの「草」を求めて

Get back, get back Get back to where You once belonged
Get back, get back Get back to where You once belonged
Get back Jojo  Go home
戻ってこい 戻ってこいよ かつてお前がいた場所に
戻ってこい 戻ってこいよ かつてお前がいた場所に
戻ってこい ジョジョ  故郷に帰るんだ

Sweet Loretta Martin thought  She was a woman  But she was another man
All the girls around her say  She's got it coming  But she gets it while she can
可愛いロレッタ・マーティン  自分を女と思ってるけど  実は男だったのさ
まわりの娘達はみんな  女の子だって言ってるけど そう見えている間だけさ
 
Get back, get back  Get back to where  You once belonged
Get back, get back  Get back to where  You once belonged
Get back Loretta  Go home
戻ってこい  戻ってこいよ  かつてお前がいた場所に
戻ってこい  戻ってこいよ  かつてお前がいた場所に
戻ってくるんだ ロレッタ  故郷に帰るんだ

Your mother's waiting for you  Wearing her high-heel shoes  
And her low-neck sweater  Get back Loretta  Go home
お母さんが待ってるぞ  ハイヒールを履いて
ローネックのセーターを着て  戻ってこいよ ロレッタ  故郷に帰るんだ

Get back, get back  Get back to where  You once belonged
Get back, get back  Get back to where  You once belonged
戻ってこい  戻ってこいよ  かつてお前がいた場所に
戻ってこい  戻ってこいよ  かつてお前がいた場所に

 最初の節の「カリフォルニアの草(California grass)」については、マリファナ大麻)の暗喩との解釈があります。そうであれば、ジョジョは薬物(麻薬)依存症であると考えられます。また、最後の節のハイヒールを履くロレッタは、LGBTQの一種、性同一性障害であると考えられます。
  そのようなマイノリティーであるジョジョもロレッタに対して、かつていた場所、故郷に帰ように促されています。どのような場合でもGet back(戻ってくる)ことで解決がなされると言っているように思いました。

 このことで思い浮かぶのは「詩編23編」です。今回は新共同訳です。
詩編23編
1【賛歌。ダビデの詩。】主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない。 
2 主はわたしを青草の原に休ませ 憩いの水のほとりに伴い 
3 魂を生き返らせてくださる。主は御名にふさわしく わたしを正しい道に導かれる。 
4 死の陰の谷を行くときも わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる。あなたの鞭、あなたの杖 それがわたしを力づける。 
5 わたしを苦しめる者を前にしても あなたはわたしに食卓を整えてくださる。わたしの頭に香油を注ぎ わたしの杯を溢れさせてくださる。 
6 命のある限り 恵みと慈しみはいつもわたしを追う。主の家にわたしは帰り 生涯、そこにとどまるであろう。

 詩篇23編は、ダビデの晩年の歌と言われています。詩篇23編では、ダビデは、自らを一頭の「羊」、そして神を「羊飼い」としています。 
 3節に「(主は)魂を生き返らせてくださる。主は御名にふさわしく わたしを正しい道に導かれる。」とあります。ここでは、「魂を生き返らせ」の「生き返らせ」に使われている原語のヘブライ語は「シューヴ」です。シューヴの本来の意味は、「神に立ち返る」「悔い改める」ですが、この詩では、「生き返らせ」になっています。英語の聖書(NIV,NRSV)では、“He restores my soul.”でした。“restore”には「回復する、元気を取り戻す、生き返る」といった意味があり、ここはやはり「生き返らせる」が訳としてしっくりきます。
 ダビデは、最後に、神への信頼に堅く立つ言葉を歌っています。6節です。
「命のある限り 恵みと慈しみはいつもわたしを追う。主の家にわたしは帰り 生涯、そこにとどまるであろう。」                                          
 ここの「主の家にわたしは帰り」の「帰り」も「シューヴ」です。「主の家に帰り」、そこに生涯とどまるとしているのは、「主の家に住まう」ことだと言えます。

 「シューヴ」のギリシャ語訳は「メタノエオー(悔い改める)」であり、イエス様はそれを私たちに求めておられます。
 ビートルズの「Get Back」から、神に立ち帰ること、悔い改めること、神はそのことを求めておられる、そのようなことを思い浮かべました。