マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

リトル・リチャードとザ・ビートルズ

 前々回のブログで「リトル・リチャードとキリスト教」について記し、リトル・リチャードが多くのミュージシャンに多大な影響を与えたことにも触れましたが、今回は特にビートルズとの関係等について述べたいと思います。

 1950年代後半に一度ロック歌手としては引退したリトル・リチャードでしたが、1962年に復活し、彼の英国やドイツでのライブの前座を務めたのが、デビューして間もないザ・ビートルズでした。そのツアーの間、リチャードは、楽屋でポールに「Tutti-Frutti」などの曲の中から「Woooo!」というファルセットの出し方を教え、ポールを指導しました。リチャードは、彼が習得できるまで、ピアノの前に座ってファルセットを歌っていたそうです。
 そこで、ビートルズがリトル・リチャードの曲をカバーする際はポールが歌うのが定番となり、「Long Tall Sally」「Hey-Hey-Hey-Hey!」「Lucille」「Ooh! My Soul」の4曲が正式リリースされています。ちなみにジョンはチャック・ベリーがお気に入りで、彼の曲を歌う担当と言えます(ジョージも彼の曲「ロール・オーバー・ベートーヴェン」を歌っていますが)。
 そして、ビートルズのデビューアルバムの1曲目「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」(1963年)も、ビートルズ日本公演最後の曲「アイム・ダウン」(1965年)もリトル・リチャードの影響の下ポールが書いた曲でした。

 前々回のブログで、「Long Tall Sally」の歌詞は単純なラブソングと書きましたが、「Lucille」はそうとも言えないように思います。私はこの曲をビートルズのこのCD(BBCのライブVol.2)で聞いています。

 ビートルズ版の「Lucille」は下のアドレスで聞くことができます。
   https://www.youtube.com/watch?v=aLN0csLUEqo

 「Lucille(ビートルズ版)」の歌詞と対訳はこうです。

Lucille, Baby do your kisses real.
Lucille, Baby do your kisses real.
Well you ran off and married, but I love you still.
 
Lucille, baby, satisfy my soul.
Lucille, baby, satisfy my soul.
Well you know I love you, baby. I'll never let you go.

Well I woke up this morning, Lucille was not in sight.
I had my baby body. But only for one night.

Lucille, please come back where you belong.
Well I'm talking to you baby. I'll never do you wrong.
 
Lucille, Baby do your kisses real.
Lucille, Baby do your kisses real.
Well you ran off and married, but I love you still.

ルシール、本気でキスして
ルシール、本気でキスして
君はいなくなって結婚してしまったけど、僕はまだ君を愛している

ルシール、僕の魂に安らぎを
ルシール、僕の魂に安らぎを
僕が愛していることを知っているくせに。僕は君を離しはしない

朝、目が覚めたらルシールはいなかった
僕のベイビーの体は一晩しかここにいなかった

ルシール、帰ってきておくれ、気の居るべき場所に
君に言っているんだ、決して君を辛い目にはあわせたりしないから

ルシール、本気でキスして
ルシール、本気でキスして
君はいなくなって結婚してしまったけど、僕はまだ君を愛している

 単純なラブソングとも取れますが、主人公は魂の安らぎを求めています。ルシールに本来居るべき場所に帰ることを求めています。このことは、人間誰でも言えることではないでしょうか? 私たちは誰も魂の安らぎを求め、本来居るべき所に帰ることが求められているのではないでしょうか?
 さらに、「Well I woke up this morning, Lucille was not in sight.」の1節は私にはルカ福音書の「エマオの弟子」を思い出させます。イエス様と一緒に歩き話してもイエス様と分からなかった弟子は、イエス様がパンを裂くときイエス様と分かります。その時視界から消えます。しかし、見えなくてもイエス様は存在します。「was not in sight」はリトル・リチャードが聖書に親しんでいて溢れ出た歌詞と思いました。
 本当の魂の安らぎは神に立ち帰ることでしか得られないこと、そして、目には見えなくても私を愛してくださった方は存在していることを、この曲は暗に示唆しているように思いました。

 牧師になったリトル・リチャードの精神をビートルズは引き継いだ面もあると考えます。ポールが惹かれたのも派手なアクションや歌い方だけでないように思います。私がリトル・リチャードの曲やそのカバーをしたビートルズの曲に惹かれるのも、その奥にあるキリスト教精神ゆえと言えるかもしれません。