マッテアとマルコの家

勤務している前橋聖マッテア教会や新町聖マルコ教会の情報及び主日の説教原稿並びにキリスト教信仰や文化等について記します。

『聖ドミニコを讃えた歌「ドミニク」に思う』

 先主日の説教で、清貧の姿で神の国を宣べ伝えた聖ドミニコについて言及しました。この聖人を讃えた歌があります。それは前回の1964年の東京オリンピックの頃、日本でも大ヒットした「ドミニク」という歌です。今回はこの歌について思い巡らしたいと思います。
 この歌のオリジナル曲を歌っていたのはベルギーの修道女スーラ・スーリール(英語訳はシスタースマイル)で、10年位前に彼女のことを取り上げた映画「シスタースマイル ドミニクの歌」もありました。

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 スーラ・スーリール本人の歌は下のYoutubeで聞くことができます。オリジナルはフランス語で、「ドミニク」は「ドミニコ」のフランス語発音です。
https://www.youtube.com/watch?v=Un_P5dyRfrY
 
 歌詞はこうです。
(Refrain):
Dominique, Nique, Nique S’en allait tout simplement
Routier pauvre et chantant En tous chemins, en tous lieux
Il ne parle que du bon Dieu Il ne parle que du bon Dieu
1A l’epoque ou Jean Sans Terre D’Angleterre etait roi,
 Dominique, notre Pere, Combattit les Albigeois
(Refrain)
2Certain jour un heretique Par des ronces le conduit
 Mais notre Pere Dominique Par sa joie le convertit
(Refrain)
3Ni chameau, ni diligence Il parcourt L’Europe a pied
 Scandinavie ou Provence Dans la sainte pauvrete
(Refrain)
4Enflamma de toute ecoles Filles et garcons pleins d’ardeur
 Et pour semer la Parole Inventa les Freres Precheurs
(Refrain)
5Chez Dominique et ses Freres Le pain s’en vint a manquer
 Et deux anges se presenterent Portant deux grands pains dores
(Refrain)
6Dominique vit en reve Les precheurs du monde entier
 Sous le manteau de la Vierge En grand nombre rassembles
(Refrain)
7Dominique, mon bon Pere, Garde-nous simples et gais
 Pour annoncer a nos freres La Vie et la Verite
(Refrain)

 「ドミニクDominique」はスール・スーリールLa Sœur Sourire、本名:ジャンヌ=ポール・マリ・デッケルスJeanne-Paule Marie Deckersというベルギーのドミニコ会修道院のシスターが1963年に作って歌った曲で、修道院で使うことを目的に、100枚限定でフィリップス・レコードによってプレスされました。ほとんど宣伝をしなかったにもかかわらず、噂が噂を呼び世界中で空前の大ヒットとなりました。美しいメロディーがフランスやベルギー国内で大評判となり、直ぐにアメリカに飛び火しました。アメリカでは、基本的には英語の歌しかヒットしないものですが、「Dominique」は数少ない例外の曲として、1963年12月にビルボード第1位となりました。ちなみに坂本九の「スキヤキ」は同年6月に第1位となりました。1964年にはアメリカの著名なTV番組エド・サリバンショー(The Ed Sullivan Show)に、彼女の所属する修道院からの中継で出演しました。
 また、1966年には彼女の半生を描くハリウッド映画「歌え!ドミニク」(The Singing Nun) という映画が作られ、デビー・レイノルズ (Debbie Reynolds) が主演して話題になりました。そこでの英語訳の歌と映像を下のアドレスで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=2emJw0_HBcQ

 英語訳の歌詞はこうです。
(Chorus)
Dominique, nique nique over the land he plods along
and sings a little song Never asking for reward
He just talks about the Lord He just talks about the Lord
1At a time when Johnny Lackland over England was the King, Dominique
 was in the backland, fighting sin like anything
Chorus
2Now a heretic, one day Among the thorns forced him to crawl
 Dominiqu' with just one prayer, Made hi hear the good Lord's call
(To Chorus)
3Without horse or fancy wagon, He crossed Europe up and down
 Poverty was his companion, As he walked from town to town
Chorus
4To bring back the straying liars and the lost sheep to the fold
 He brought forth the Preaching Friars, Heaven's soldiers, brave and bold
Chorus
5One day in the budding order, There was nothing left to eat,
 Suddenly two angels walked in With a load of bread and meat
Chorus
6Dominique once in his slumber Saw the Virgin's coat unfurled
 Over friars without number Preaching all around the world
Chorus
7Grant us now oh Dominique The grace of love and simple mirth
 That we all may help to quicken  Godly life and truth on earth
Chorus
 
日本語に訳してみます。
(折り返し)
ドミニク ニク ニク  いつでも質素な身なりで
貧しさと歌とともに旅をする 報酬を決して求めず
彼は神の教えだけを語る 彼は神の教えだけを語る
1イギリスでは ジョン失地王のころ
 ドミニクは 罪深い異端と戦った
2ある日 異端者が彼をイバラの道へと導いた
 しかし ドミニクは 喜びを通して彼を転向させた
ラクダもなく 馬車もなく みずからの足でヨーロッパを旅した
 街から街へ 清貧の中で
4はぐれた嘘つきおよび失われた羊を、思い出させるために
 彼は、勇敢な天国の兵士である説教修道士を育てた
5ドミニクと彼の兄弟の家で 日々の糧が不足しはじめたとき
 ふたりの天使が現れた 見事な黄金のパンをたずさえて
6ドミニクは夢みた
 世界中の大勢の修道士が聖母マリアの衣のもとに集うことを
7ドミニクよ 我らを質素で恵みに満ちたまま 救いたまえ
 この世に 神の生命と真実を告げるために

「ドミニク」の歌は世界中でヒットし、それぞれの国の言葉に訳され歌われました。日本ではペギー葉山ザ・ピーナッツ、NHK「みんなの歌」等がそれぞれの歌詞で歌っていました。ザ・ピーナッツのものは原詩から離れたものでしたが、ペギー葉山のものはフランスの原語に忠実にかなり忠実に訳していました。ペギー葉山の歌は下のアドレスで聞くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=kO5MmNPl6KE

 ペギー葉山伊東ゆかりが歌っていた音羽たかし訳の歌詞を下に示します。
『(おりかえし)ドミニク ニクニク そまつななりで 旅から旅へ 
 どこに行っても 語るのはただ 神の教えよ
 1イギリスならば ジョン王の頃 セント・ドミニクの この物語
 2他宗のものと 教えをきそい 力の限り それと戦い
  3ラクダに乗らず 馬車にも乗らず 貧しさの中に 旅をつづけた
 4その日の糧に こと欠くときも 神の恵みの パンを授かり
 5信仰あつい 若者たちを あつめて神の 教えをひろめ
 6聖母の愛の 翼の下に つどう同志を 夢見つづけた
 7セント・ドミニク お守りください まことを人に 伝えるために』

 この歌はシスターたちが自分の修道会の創始者である「聖ドミニコ」を讃えてとりなしを祈る歌でした。
 折り返しの歌詞、「いつでも質素な身なりで 貧しさと歌とともに旅をする 報酬を決して求めず 神の教えだけを語る」
 これは聖ドミニコの信念でありドミニコ会の姿と言えます。

 先主日福音書箇所の中心聖句は、以下の通りでした。
『旅には杖一本のほか何も持たず、パンも、袋も、また帯の中に金も持たず、ただ履物は履くように、そして「下着は二枚着てはならない」』(マルコによる福音書6:8-9)
 これはすべての人が清貧の姿で福音宣教の旅にでなければならないということでしょうか? ここはイエス様が求める姿勢を示していると考えます。私たちはそれぞれの場に、イエス様によって「神の国を宣べ伝える」ために派遣されているのです。私たちが、物にとらわれず身軽にそれぞれの生活の場で福音を宣べ伝えることをイエス様は求めておられると考えます。
 
 聖ドミニコを讃えた歌「ドミニク」によって、教会音楽の新たな世界が開かれました。多くの人に聖ドミニコの働きや神様の御心を知らせ、教会のイメージを変え、ギターを使うなど教会音楽の可能性を広げました。「ドミニク」の歌をお与えになった神様に感謝であります。